📌 結論・ポイント(3行要約)
- 乗員半減と複数クルー制:従来型汎用護衛艦(約170〜200名)の半数となる約90名での運用を実現し、少子化・隊員不足に対応した次世代水上戦闘艦。
- もがみ型から「新型FFM」への移行:当初計画の22隻建造を見直し、もがみ型は12隻で終了。13隻目(令和6年度計画艦)からはVLS16セル新造標準装備・艦型拡大(4,880トン)の新型FFMへ進化。
- 多機能性と無人機統合:平時の警戒監視から対潜戦・対水上戦・機雷敷設/掃海、さらにUUV(水中無人機)・USV(水上無人機)運用までを1隻でこなす設計。
目次
1. もがみ型護衛艦(FFM)の概要と設計思想
もがみ型護衛艦(FFM:Frigate with Multi-mission)は、海上自衛隊が2022年より就役させている最新鋭フリゲートです。厳しい人手不足と周辺海域の任務増大という二重の課題を克服するため、「徹底した省人化」「コンパクト化」「多機能性(Multi-purpose)」を軸にゼロから新設計されました。
外観上はレーダー反射断面積(RCS)を大幅に低減したフラットなステルス傾斜船体と、各種通信・レーダーアンテナを一本の塔に内蔵した複合マスト(ユニコーンマスト)が特徴です。また、円形スクリーンで全周囲映像と戦況を統合表示する「OIC(先進統合情報センター)」を搭載し、少人数での即応的な判断を支援しています。
2. 一次資料で見る建造実績と新型FFMとの比較
海上自衛隊および防衛装備庁の公表資料に基づく全艦の建造実績と、次期主力となる「新型FFM」の性能比較は以下の通りです。
【表1】もがみ型護衛艦(1〜12番艦)の建造・就役実績
| 艦番号・艦名 | 建造造船所 | 進水日 / 就役日 | 配備先(母港) |
|---|---|---|---|
| FFM-1 もがみ | 三菱重工業 長崎造船所 | 2021年3月3日 / 2022年4月28日 | 横須賀(掃海隊群) |
| FFM-2 くまの | 三井E&S造船 玉野(現三菱重工マリタイム) | 2020年11月19日 / 2022年3月22日 | 横須賀(掃海隊群) |
| FFM-3 のしろ | 三菱重工業 長崎造船所 | 2021年6月22日 / 2022年12月15日 | 佐世保(護衛艦隊) |
| FFM-4 みくま | 三菱重工業 長崎造船所 | 2021年12月10日 / 2023年3月7日 | 佐世保(護衛艦隊) |
| FFM-5 やはぎ / FFM-6 あがの | 三菱重工長崎 / 玉野 | 2022年進水 / 2023〜2024年就役 | 大湊・舞鶴等へ順次配備 |
| FFM-7〜12(建造中・計画) | 三菱重工業 長崎・玉野 | 令和8年度(2026年度)までに順次就役 | 全国主要地方隊・護衛隊へ配備予定 |
【表2】現行もがみ型(01FFM)と新型FFM(06FFM)の性能・装備比較
| 比較項目 | もがみ型(01FFM:1〜12番艦) | 新型FFM(06FFM:13番艦以降・10隻計画) |
|---|---|---|
| 基準排水量 / 全長 | 約3,900トン / 133 m | 約4,880トン(約1,000t大型化) / 142 m |
| 垂直発射装置(VLS) | Mk.41(16セル・新造時後日装備) | Mk.41(16セル・新造時から標準搭載) |
| 主要防空・対艦兵装 | SeaRAM、17式艦対艦誘導弾(SSM-2) | 新艦対空誘導弾(A-SAM)、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型) |
| 乗員数 | 約90名 | 約90名(大型化しても省人化水準を維持) |
| 1隻あたり建造費 | 約470億〜500億円 | 約850億〜870億円(武装強化・物価上昇分含む) |
3. 争点・運用上の評価と課題(両論併記と国会審議)
高評価・革新点
- クルー制による隊員のワークライフバランス改善:3隻を4クルーで交代運用する「クルー制」により、長期航海後の確実な休暇取得と定着率向上が可能に。
- 掃海機能の集約:従来は木製・FRP製の専用掃海艇が必要だった機雷戦を、ソナー・無人機により護衛艦単艦で安全に実施可能。
- 低コストによる隻数維持:大型イージス艦(約1,500億〜2,000億円)に比べ安価で、日本周辺の常時警戒監視網を維持できる。
懸念・課題(新型FFMへの移行要因)
- ダメージコントロール(抗堪性)の限界:乗員約90名は平時巡視には最適だが、実戦で被弾・損傷した際の消火・注排水(ダメコン)要員が著しく不足するリスク。
- 防空能力の不足(VLSの後日装備問題):初期建造艦はVLSが後日装備とされ、敵航空機や対艦ミサイルに対する個艦防空能力(短SAM等)が限定的であった。
- 建造費の上昇:装備強化と為替影響により、新型FFMでは1隻あたり約850億円へと建造単価が跳ね上がっている。
4. 関連装備・政策へのリンク
- ▶ イージス艦とは?こんごう型・まや型の能力・任務を徹底解説 — 第一線防空艦との役割分担
- ▶ そうりゅう型・たいげい型潜水艦とは?世界最高水準の能力を解説 — 海中優勢の担い手
- ▶ 12式地対艦誘導弾(能力向上型)とは?艦発型の搭載構想
- ▶ 防衛装備庁(ATLA)とは?調達改革と艦艇建造入札
5. 公的出典・検証資料一覧
- 防衛省「我が国の防衛と予算(令和6年度予算の概要)」p.21「新型FFMの整備」(PDF)
- 海上自衛隊「もがみ型護衛艦の就役について」公式プレスリリース各回(mod.go.jp/msdf)
- 防衛装備庁「調達情報・契約実績公表(艦船分野)」(atla.mod.go.jp)
最終更新日:2026-09-13
🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)
当解説は、防衛省・防衛装備庁などの公的機関が公表した資料をもとに、DEFENSE NAVI編集室が作成・更新しています。誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームからお知らせください。
